自転車語り 橋本幸太さん(3)全3回

自転車語り 橋本幸太さん(1)全3回
自転車語り 橋本幸太さん(2)全3回

 乗る楽しさ、駆け抜ける魅力。多くの人々を惹きつけてやまない「自転車」という存在。阿蘇という土地ならではの自転車の楽しみ方を、自転車好きのみなさんに語っていただきました。

橋本幸太さん

トリムカンパニー 代表
阿蘇サイクリストコンソーシアムのメンバー。マウンテンバイクツーリングの企画を行う『トリムカンパニー』の代表。そのコースは下り坂の走りをメインとし、参加者の技術に応じたトレイルコースが好評。

mail:trim@aso-cycletour.com

トレイルツーリングによって
道を「使う」ということ

 トレイルを自転車で走ることには、安定感のない土の上や想像もできない障害物を自分の力でクリアし、走破してゆく楽しさがあります。自然と一体になるので、普段では抑えているような自分の感情をストレートに解放できる喜びがあります。そんなコースとしての阿蘇のトレイルは本当に素晴らしいです。私も阿蘇以外でさまざまなトレイルを走りますが、それが一般には評判を耳にする良コースであっても、どうも、地元で普段走っている道の方が走っていて面白い。そして気付いたのが、普段当たり前に走っている阿蘇の道は、ごく一般的には全く「当たり前ではない」ということ。阿蘇で自転車を乗ることの楽しさ、環境の素晴らしさを、そこから改めて再発見できるようになりましたね。

 トレイルコースの現場を間近で見ていますが、現代の道路事情に合わせて昔の道は急速に荒廃と風化が進んでいます。これは実に惜しいことだと思います。昔の道には、その合理性と適性によく感心させられるんですね。それらは決して進み心地が良かったり使い勝手の良い道ではないのですが、その作りは山の傾斜や稜線などに“自然の成り立ちに沿って”驚くほど上手に作られているんです。そんな素晴らしい道の荒廃を目の当たりにしていると、どうにかこの道をうまく活用し、残していけないものだろうかと思います。そういった点でもこのマウンテンバイクツーリングでのコース設定にうまくそういった道を重ね、野を自転車で駆ける喜びと古い道の維持とに良い効果が生まれればと考えています。